海外出張は物事の本質を見つめる良い機会
ニューヨークに出張中です。僕は海外出張に行くと、大抵、会話の難しさに凹んで帰って来るんですが、今回もそれを強く感じています。
と言っても、別に英語のスキルが低くて云々という話じゃないんです。自分の考えを伝えようという熱意があれば、英語力が足りなくても意外に何とかなるから。問題なのは、そもそも伝えるものを自分が持ち合わせていないことに気付いたときです。
欧米人は基本的に、何事に対してもキーコンセプトに意識を集中させていて、枝葉末節には興味がない。すぐマニアックな方向に走る日本人とは対照的です。
日本人は、何かといえば「アメリカ人には日本の繊細さは分からない」みたいに欧米を馬鹿にする節があるけど、向こうから見ればこっちこそ馬鹿みたいなんですよ。どうでもいいことにばっかり固執してるんだから。これってどっちが良いとか悪いではなく、木を見るか森を見るかの違いなんだと思います。
そんな訳で、欧米人に"So what does it do?"とか"How does it work?"と聞かれたとき、こっちの持ち時間は10秒くらいしかありません。向こうが期待する答えはずばりキーコンセプトであって、細かい話ではないから。10秒間に、物事が持っている本質を凝縮して、言葉に変換して話せないと駄目です。10秒過ぎると、相手の関心は別のところに行っちゃいます。
こういう場面で、僕は言葉に詰まってしまう。英語が出てこない。頭の中にあるもやもやしたイメージを、文章に変換することができない。「うーん」と言ったまま黙ってしまう自分に、相手はあからさまに怪訝な顔をする。
で、ここでやっと気付くんです。これは英語力の問題じゃないということに。だって、たとえ日本語を使ったとしても、10秒に要約なんて絶対にできないから。自分が今まで、物事を曖昧に捉えたまま、理解したつもりになってきたツケが、ここで一気に露呈してしまっているんです。
ショックなのは、自分が日常接していて、他の人より詳しいはずのソフトウェアやWebの話題でさえ、うまくまとめられないことが多い。例えば"What's Nico Nico Douga?"と聞かれたとき、ぱっと10秒で答えられるかどうか。今の自分にはできないです。
日頃から、どんな物事に対しても、そのキーコンセプトが何なのかを考えて、短い言葉に変換する練習をしておいた方が良いように思います。キーワードの頭に、ひたすら"What is"を付けて自問してみるとか。物事の抽象度が上がれば、難易度も高くなります。"What is Internet?"とか"What is software?"辺りになってくると、あと何年勉強しても答えられなさそうですけどね。